ピンポーン
- freelancemania8
- Dec 26, 2024
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ピンポーン
祝勝会も終わり、美海はぐっすりと睡眠をとっていた。
ピンポーン
インターホンが鳴っている。
だが起きない。微動だにしない。幸い今日は日曜日。時刻は13時ジャストだ。
実は美海は高校生になって、家を出てマンションで一人暮らしをしている。
だから美海が起きない限り誰もドアを開けない。
ピンポーン
ゴソッ
美海は音に気付いたのか、深く布団に潜る。
相変わらず寝起きは悪いため、学校は毎日遅刻だ。もう先生も生徒も学校も慣れた。こいつは起きない、と。
ピンポンピンポンピンポンピンポーン
「………」
ピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポーン
ムクッ
美海は起き上がると不機嫌そうな顔をして玄関に向かった。覗き穴も見ずにドアを開ける。
「いつまで寝てんの!」
そこには山本が立っていた。
花柄のフリルのワンピースに巻き髪がよく似合っている。
「入るよ!ほら!髪直す!パジャマ着替える!」
いつもとは立場逆転だ。
美海は髪はぐちゃぐちゃにハネていて、パジャマのままだ。
「なんだ~…佳菜かぁ…じゃあいいや。寝る」
「じゃあいいやって!それが友達にとる態度!?起きるの!」
再びベッドに戻る美海を山本が止めた。
「昼御飯は?」
「スパゲッティ…」
美海は呟いた。
ズズズズ。
「で?どうしたの?」
髪を整え、すっかり目を覚ました美海は山本に聞いた。
今は山本にスパゲッティを作ってもらい、机で一緒に食べている。
やっぱり美海は寝起きでグズッてる方がかわいいかな、と山本はふと思った。
山本の知っている唯一の弱点だからだ。
「どうしたもこうしたも!赤坂くん振ったらしいじゃん!」
「振った?」
美海はポカーンとしている。
「祝勝会の日のことだよ!美海はどうした?」
「えっと…一人で出かけられないから付き合ってって。だから仕方ないからいいよって答えた」
話は本当だったんだ。
美海の第二の弱点は色恋か。
「……美海は根本的にわかってないと思う」
山本は全てを悟ったように紙袋を机に置いた。
ドーンと効果音が出そうである。
「これ。読んで。いや。読みなさい」
中には大量の少女漫画があった。
「漫画?私には必要ないよ。メリットないじゃん」
「メリット?…ふふふ…ふはははは!美海!私ははっきり言うわよ!完璧な美海にも一つ学べてないものがあるわ!」
美海は学べてないという言葉に反応した。
つかキャラ変わってるよ。
「恋よ!」
「いいの!?これを読めば全てがわかるわ!」
ジャーンと山本は指差す。
美海は何故か燃えていた。
数日間で山のようにあった少女漫画を読み終え、美海は理解した。
私は赤坂くんに酷いことをしてしまった。
「美海!わかった?」
コクリと美海は頷く。
山本は漫画を取りに来たのだ。
「じゃあ、OK出す時は?『俺は…お前が好きなんだ!付き合ってくれ!』」
山本は声を低くし身振り手振りでなりきる。
「『ワタシモ。ワタシモスキ!』」
美海は棒読みだ。
「まずまずね。じゃあ断りたいときは?」
「『ゴメンナサイ!イマハツキアエナイ。デモアリガトウ』」
「OKOK!できるじゃん!」
「私…酷いことしたよね…」
美海は少し落ち込んだ。
「じゃあ赤坂くんと付き合いたい?」
佳菜にもう一度聞かれても、私は多分。付き合いたいとかはない。
美海は首を横に振った。
「わかった。じゃあいつもどおりでいいと思うよ!」
山本の笑顔に少しだけ安心した。
プルルルル…プルルルル
「なんだろ?ちょっとごめん」
家の電話が鳴り響き、美海は立ち上がる。
ガチャ
「はい。立花です。」
〈美海ちゃん?〉
「叔父さん?どうしたんですか?」
電話の向こうからは落ち着いた低い声が聞こえる。
〈実はね。ご両親が…「父と母がどうかしたんですか!?」
嫌な予感がした。電話相手の叔父は外科医である。
〈─────。〉
「…………わかりました」
美海は浮かない顔で受話器を置いた。
山本も眉を寄せている。
「ちょっと行ってくる」
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