心配を口にしたのは馬謖だ。いつも思い付きでばかり動いているから、警戒を持っているんだろうな。
「五つの有利がこちらにはある。一つは、こちらが仕掛ける時期を選ぶ動の有利。二つは、まさか直ぐにという不意をつける遽の有利。三つは、相手の居場所が解っている索の有利。四つは、無能な司令官が指揮を執っている頂の有利。五つは、兵糧を購入して回った信の有利。これだけ揃っていて戦わん理由の方が無い」
「…………島大将軍の言はごもっ M字額 ともで御座いますが、兵力が絶対的に不足しております。蜀兵全軍で出ても半数以下でしかありません」
そこだよ、だが戦は兵力でするものではないぞ。同時に戦える数、それはまとまっている兵力とは別の話だ。
「魏軍は対岸にいつから陣取っている」
「三日前からで御座います」
郭淮将軍は先に、夏候儒は後にやってきたんだろうな。
「ならば、地形についても敵より深く把握しているのではないか」
「その通りです、ご領主様!」
「李項も李封も味方の陣地構築で周辺を偵察しているし、城からも見えている場所だったはずだ。何よりこちらには地元の利がある、装備の充足率も高く、戦意も上々。これで勝てねばいついかなる状況で勝つつもりだ?」
こうまで言われて引き下がる様なら軍師などせずに、成都で農業事務でもして生涯を過ごすべきだ。馬謖も考えを改めて意見の方向性を変えて来た。
「さすれば……河上より攻撃を仕掛け、注意を向けさせているうちに、暗夜密かに河を渡らせた兵で後方を衝く策がよろしいでしょう」
そうだな、それで河へ追い落とせたら一番だ。明るくなるまで籠城を決め込まれたらこちらの負け、初動が全てだぞ。
「楊県令、付近の橋の場所と、軍船の数を」
「承知致しました」 すぐに布地図を持ってこさせると、そこへ直接書き込んでいく。ふーむ、西と北に二カ所か、これを落とされたら互いに困るから手つかずだな。監視兵位は置いているだろうが。押せばひっくり返るような船も含めて四千人は乗れるものがあるか。時間があればもっと集められるとはいうが、生憎今ないものは数に入れられん。
問題は一つ、軍船の指揮官が居ないことだ。中県勢は山育ち、石苞も夏予も山だな、うーむ困ったぞ。
「大将軍、北の橋は石苞将軍、西の橋は夏予将軍、主力は李項将軍にお任せするのが宜しいでしょう。副将に李封将軍を」
「島大将軍、後背よりの攻撃に参加する許可を得たく思います」
進み出たのは赫将軍だ。騎兵なんだ、行き場所は自然とそうなるな。俺は長平城で待機か、軍船をどうするかこいつも迷っているんだろうか? 馬謖をみるとそうでもない顔をしている、どういうことだろう。
「赫将軍にお願いしたい。馬謖、軍船の指揮官が不在だ、誰が適任だと考える」
「それですが、将軍方は皆が山や平地でのお生まればかり。私は襄陽の河のとほりで生まれ育ちました、少しばかり水上での動きには心得が」
そういうことか、こいつ自分のことをいつ売り出せるか空気を読んでいたんだな。まあいい、出来る奴がいたのを幸いとしよう。
「序列を定める。
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